一番星・・

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『いちばんぼし~!』

「えっ?」

『あれ!いちばんぼしだよ!』


ふと、空を見上げてみると、そこにはキラキラと星が瞬いていた。


「あぁ・・そうだね、一番星だ。」


そう云えば空を見上げるのは、いったい何日ぶりだろうか・・?
なんだか随分と見ていないような気がするなぁ・・

雲の合い間から、ひょっこり顔を出してこちらを見ている。
よく見ると、一番星だけじゃない。
あちらにも、こちらにも・・
無数に見え隠れする星々がある。
大きく輝くもの、小さく輝くもの・・
どの位あるのだろう・・?
この目で見えるものだけを数えるのも難しいけど、よ~く目を凝らし数えてみる。


『あっ、あっちにも!』

『こっちにもあるよ!』

「う~ん・・数え切れん!!」


きっとそこには、僕等には数え切れないほどの星がある。
僕等には考えられないほどの想いがある・・
目を閉じて、心で感じることができれば、目に見えない星の輝きも見えるのだろうか・・


『くしゅん・・』

「ごめん、寒いね。」

『うん、さむいよぉ~』

「さあ、帰ろうか・・」


きっと・・
あの無数の星たちの中に、君の想いも、僕の想いもあるのだろう・・
もう、今となっては見つける事はできないけど・・
またいつか、出逢うことはあるのだろうか・・?
一緒に・・歩めることはあるのだろうか?

きっと僕が、君の想いを見つけられた時、その時は・・
≪ありがとう≫って言えるの・・かな?


冷たくなった小さな手を、きゅっと握って家路を辿る。
空を見上げれば、さらに数多の星たちが輝きを増している。
あの中にきっと、君の想いが、僕の想いが、あるのだろう。
今はまだ、僕には見つけられないけれど・・


 『一番星みつけた。
   あれあの森の
    杉の木の上に――・・』














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   生沼勝作詞(注)・信時潔作曲/文部省唱歌(一年)










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