2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

魔法の宝石箱

高校生の時、心理テストが流行っていた。 河を渡ってきた彼にひと言言うとしたら?とか、4種類の動物に、それぞれ身近な人を当てはめて、とか。 女子高だったわたしは、体育の時間はやりたい人がやれば的に、友達数人と壁際で話してた。 いろんな心理テスト…

魔法の夢

台風一過の昼下がり、厚い雲から差し込むお日さまが嬉しくて、わたしは外へ出た。 この時期に香る金木犀も好き。 あちこちに植えられたお花を楽しみながら、雨の中、傘もささずに歩いていた。 しばらくすると、手を合わせながらおばあさんが近寄ってきた。 …

魔法の24時間

その日、早朝にメールで起こされた。 『あなたの24時間を私にください。』 そんな風に書かれたメールに、わたしは何かの間違いだろうと、二度寝の態勢に入った。 さらさらと心地よく触れる毛布の感触を肌に感じながらうとうととしかけたところに、突然ドアベ…

魔法のお団子

「もぉいいよぉ~。わかってるから。」 彼から謝罪のメールが来た。わたしはすかさず電話した。 今年は、中秋の名月とスーパームーンが連日楽しめるドキワクの9月だった。 もちろんわたしは、すすきとお団子と天体望遠鏡を用意して、彼の帰りを待っていた。 …

魔法のおはぎ

「大好きだったんだよね。」 彼女がぽつりと言った。わたしは「うん」と、小さくうなずいた。 「いつも笑顔だった。」 少し間をおいて、彼女がまたぽつりと言った。わたしも間をおいて、「うん」と言った。 彼女のお婆さんが亡くなった。わたしが知らせを聞…

魔法のお塩

「ね、あ~んして。」 わたしは彼の唇を見つめながら囁いた。 彼は微かに唇を動かしただけで、目を閉じたままだった。 まだ無理かな…。 少し冷めたおかゆさんの入ったレンゲを置いた。 わたしはきゅっと唇を結んで涙をこらえた。 彼が倒れた。 連日の猛暑で…

魔法のお線香

部屋の隅で、ひざを抱えて泣いていた。 顔を上げることができなかった。 読経の流れる中、誰かがわたしの腕をつかんだ。 『お線香、立ててあげて。』彼女はそう言った。 わたしは言われるままに祭壇の前に立ち、お線香を立てた。 遺影を見ることはできなかっ…

魔法の浴衣

『わが社では、夏まつり期間中の浴衣着用を推奨します。』 『県外からお越しのお客様を、おもてなしの心でお迎えしましょう!』 突然そんな周知が社内に回った。 「ただでさえ暑いし忙しいのに、浴衣なんてねぇ~。」そんな声が聴こえてきた。 でもわたしは…

魔法のお天気予報・2

~今日は、曇りのち晴れ。夜には星が降るでしょう。~ 「ホントに!?」 わたしはバタバタとテレビに走り寄って、お天気お姉さんに訊いた。 あまりの形相にびっくりしたお姉さんは、身を引きながら苦笑いして応えてくれた。 ~うちの天文部の正確さは類を見…

魔法のお天気予報・1

~今日は、晴れ時々曇り。ところによってお日さまが降るでしょう。~ 「…え?」 わたしは、朝食を作りながら聞き流していたお天気予報に、思わず聞き返してしまった。 ~ですから、ところによってお日さまが降るのでご注意ください。~ お天気お姉さんが応え…

魔法の虹

ずっと降り続いていた雨が、その日の朝、止んだ。 久々に顔を覗かせた太陽は眩しく、わたしは目を細めながら西の空を見た。 「あっちだよ。早くしないと消えちゃうよ!」 「え…?待って、そんなに速く走れないよ。」 友達が急に走り出した。わたしも慌てて走…

魔法の声

「そっちじゃないよ!」 突然彼がそう言った。 わたしは訳が分からず、足を止めて振り返った。 「え?」 「だから、そっちじゃないよ」 救急病院からの帰り道、始発に間に合いそうだったので、わたしは地下鉄の駅に向かっていた。 夜中にタクシーで来て、朝…

魔法の橋

天の川にかかる橋はきっと、織姫様と彦星様の二人の想いだけではないのかもしれません。 二人を見守る沢山の人々の想いが折り重なって、鵲の姿を借りて実現したのかも。 そんな風に考えると、年に一度しか逢えない寂しさも哀しみも、乗り越えられると思いま…

魔法の天の川

今日は雨。 あなたに逢える大切な日なのに、どうして雨なのかしら…。 溜息ひとつ。 晴れたら天体観察しようねって、約束してたの。 夕方には上がるらしいけど、そのあとの予報は曇りだしね。 朝からずっと、天気予報とにらめっこ。 ん~、このお天気予報…変…

魔法の短冊

年に一度、涙の河を乗り越えて、織姫様と彦星様は逢瀬を交わす。 愛し愛され心を通わせたふたりが、理不尽にも(いや、理由はあったけど)引き離された哀しいお話。 雨が降ったら河の水かさが増して、逢えなくなってしまうとか…。 ううん、今は雨が降っても…

魔法の吐息

しばらくぶりに、メールチェック。 なにせ、ほっとくと100件超えてることなんてざらにあるから。 いつも友達に怒られる。急ぎの用事もあったりするんだって。 そう言うものかな。便利だけど面倒くさいんだよね。 業者関係、メルマガ、迷惑メール。 そんな中…