2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

魔法のカーテン

カチャカチャと、耳障りな音が聴こえてきた。 「あら、目が覚めた?」 って、なんだか体格よさそうな女の人の声。 わたしは目を開けてそちらを見ようとしたけど、体が動かない。 あれ…? 体だけではなく顔も動かせないことに気づいたのは、鼻に酸素チューブ…

魔法の猫バス

通りを歩いていると、数人の子供たちが息を切らせながらバタバタと走ってきた。 みんな一様に、きらきらと目を輝かせている。 「うわぁ~い。猫バス見たー!」 「猫バス猫バスー。」 「願い事が叶うんだー!やったぁー!」 ネコバス…?って、あのジブリの猫…

魔法の白い花

郊外の、すごく辺鄙なところにわたしのアパートがあります。 駅から随分離れているので、残業で遅くなったときなんかは、真っ暗な道を歩かなければなりません。 これ以上ないくらい神経を尖らせて、ちょっとの物音も逃さないように一歩一歩進みます。 これで…

魔法のぬいぐるみ

わたしの車の助手席には、大きなくまのぬいぐるみが鎮座している。 ちゃんとシートベルトを締めて、危険がないかを見ていてくれてるの。 夜のドライブなんかは、彼がいてくれて本当に助かる。 だって‥一応女の子だから、何があるかわからないでしょう? あ、…

魔法のおにぎり

友達からメールが来た。 『お~い!生きてるかぁ~?(笑)』 わたしは返信できなかった。 『生きてる』ってなんだろう…?そんな事を思っていた。 しばらく、外界から離れていた。 生きていくってことの意味が解らなかった。 生きる。 生きている。 生きてい…

魔法のオルゴール

「ねね、オルゴール置いたから、聴きに来てね!」 お友達から、そんな誘いを受けた。 彼女は、わたしがここに来てすぐにできた、長い付き合いのお友達。 一時は男性を巡って、ライバル宣言をされたこともあるんだけど。 もう覚えてないかな? でも、わたしに…

魔法のお月さま

わたしには、遠距離恋愛の彼がいる。 あんまり遠すぎて、年に1回逢えればいい方かな。 電話代も高くついちゃうから、コミュをとるのは専らネット回線を使ってになる。 メールにLINE、ライブチャット。 やっぱり声が聴きたくなるし、顔も見たくなるから、ライ…

魔法のチューリップ

ご近所の空き地に、チューリップが咲きそろいました。 むかし、独り暮らしのお婆さんが住んでいた場所。 お婆さんが亡くなった後、家は取り壊されたけど、花壇だけは残されたとか。 近くに住んでるおばさんが、毎日お手入れをしていました。 雨の日は傘をさ…

魔法のクレヨン

「はい、じゃあみんなで、お母さんのニッコリ笑顔を描きましょうね~。」 そんな先生の掛け声で、周りのみんなが一斉にお絵描きを始めた。 わたしはひとりうつむいたまま、クレヨンを持つことができなかった。 「海月ちゃんは、おばあちゃんを描きましょうね…

魔法の自転車

大好きなお兄ちゃんが引っ越してから、1ヶ月が経つ。 高校を卒業して、大学進学のために遠いところでひとり暮らしをはじめたのだ。 最初の頃のメールは即レスだったのに、最近は一日に一回しかくれなくなった。 わたしが寂しんぼだって知ってるくせに…。 ひ…

魔法の紅茶

今日は、大好きなおばあちゃんのところへ行きます。 ちょっぴり早起きをして、クッキーを焼いてみました。 ちょっと不恰好だけど、おばあちゃんならきっと喜んでくれるはず。 おいしいって言ってくれるかな? おばあちゃんのおうちへ行くと、いつもいろんな…

魔法のヴァイオリン

「ねぇ、お願い。魔法をかけて。」少女は、古びたヴァイオリンに手を添え、話しかけた。ヴァイオリンは微かに揺れ、ギィ‥と一音だけ鳴った。「やっぱりもう、ダメなのかな…。」溢れる涙をそのままに、少女はヴァイオリンを抱きしめた。2年前までそのヴァイオ…