魔法のお天気予報・1







~今日は、晴れ時々曇り。ところによってお日さまが降るでしょう。~


「…え?」

わたしは、朝食を作りながら聞き流していたお天気予報に、思わず聞き返してしまった。

~ですから、ところによってお日さまが降るのでご注意ください。~

お天気お姉さんが応えてくれた。

「あのぉ~。お日さまが降ってきたらどう注意すればいいの?」

わたしの問いかけに、お姉さんが再び応えた。

~そんなのわたしが知るわけないでしょ!自分で何とかしなはれ~!~


う…、最近のお天気お姉さんは冷たすぎ。もう少し優しくお相手してくれてもいいのにね。
わたしはブツブツと呟きながら、会社に向かった。
真っ青な空にはすでに、白熱した太陽が昇り始めていた。
一応日傘は持ってきた。『お日さまが降る』って言うのはつまり、お天気がいいって事なのだと思ったから。
眩しい日差しに目を細め、空を見上げた。今日も暑くなりそう。

時間を追うごとに、太陽はさらに上へ上へと昇って、じりじりと大地を焦がす。
人も焦がす。ダメだし…。日焼けは大敵!
おばあちゃんになったら、しみだらけになっちゃう。
そしたらおじいちゃんに愛想つかされちゃうじゃない。

ランチの時間。今日は外へ食べに行くので、おニューの日傘をさしてみた。
淡いピンクにレースのついた可愛い系。
ちょっとわたしには不似合いかもだけど、たまには、ね。
外はお天気お姉さんが言ってた通り、『お日さまの降る』いいお天気。
ちょっとひと雨ほしいかなぁ~。
そんな事を思って空を見上げると、突然もくもくと雲に覆われて、あり得ないほどの激しい雨が降ってきた。
え~???雨が降るなんて言ってなかったじゃな~い!

…って、あれ?
なぜかわたしの周りだけ、雨が当たらない。
てか、わたしの周りだけ、雨降ってないよぉ~???

周囲の人たちが怪訝そうな顔でわたしを見ながら、ずぶぬれになって走り去っていく。
日傘のおかげかなぁ~って思いながら、傘を閉じてみる。
…けど、やっぱりわたしには雨が降らない。
何がどうなってるのかしら?
よくわからないまま、わたしはランチを済ませた。

自宅へ帰ってテレビをつけた。
朝のお天気お姉さんが、今度は明日のお天気を案内していた。
わたしはお姉さんに、今日の出来事を話した。
するとお姉さんは、

~だから言ったじゃない。『ところによって』って。~
~でも、あなたが涙を流したら、その効果はなくなるからねー。~

って、笑顔でウインクしてくれた。

うん、大丈夫。もう泣かないよ。
わたしの中に降ってきたお日さまは、今度は大事に大事に育てるから。