魔法の夢







台風一過の昼下がり、厚い雲から差し込むお日さまが嬉しくて、わたしは外へ出た。
この時期に香る金木犀も好き。
あちこちに植えられたお花を楽しみながら、雨の中、傘もささずに歩いていた。

しばらくすると、手を合わせながらおばあさんが近寄ってきた。
目をキラキラ輝かせながら、手をこすり合わせて。
…ってわたし、拝まれてるみたい。。

そのおばあさんが、ふと空を指さしわたしに言った。

「虹が出ています。」

え?わたしはそのおばあさんが指さす方向を見た。
するとそこには、とてもくっきりとした、大きな虹がきれいに出ていた。

「あぁ、本当ですね。すごく大きな…とても綺麗な虹ですね。」

わたしは感嘆の声を上げた。
おばあさんは目を潤ませながら、虹を拝んでいた。(わたしじゃなかったんだ…!)
なんだか昔話に出てくるおばあさんみたい。
そんな事を思っていると、突然おばあさんがこっちを見て

「今日は良いことがありますよ。」

そう言ってほほ笑んでくれた。

「ええ、良いことあるといいですね。」

わたしも微笑み返した。

また虹を見て感動しながらおばあさんを振り返ると、もうそこにはおばあさんはいなかった。
金木犀の香りだけが、微かに揺れていた。


わたしには夢がある。
きっとみんなには、ほんの些細なことなのかもしれないけど、わたしにはとてつもなく大きな夢。
誰にも認めてもらえなかった夢。ずっと、不安と葛藤の中で続けていた。
自分でも無理だろうと思いながら、それでも手放すことができずにいた夢。
今日それを、認めてくれる人が現れた。
そっと伝えてくれたその想いに、わたしはとても嬉しくなった。
続けてきて良かった!
本当に、本当によかった…。

おばあさん、ありがとう。良いことあったよ!
おばあさんにも、いいことあったかなぁ?



ときに不安に襲われながら、泣きながら、それでも少しずつ歩いていました。
わたしのやっていることは間違ってないかな?
もうこんなことやめてしまえば楽になれるのに。そんな事を思いながら…。
それでもやっぱり、自分の信じた道は貫いていきたい。
のろまなわたしはきっと時間がかかるし、夢を叶えられた時には、もう誰もいないのかもしれないけれど。

いつかこの夢が実現して、大好きな人に届けられたらいいな。
やっぱり大好きな人に認めてもらえるのが、一番うれしいから―。