魔法のおパ○ツ







「ねね、あんたの彼ってさぁ~ダサくない?」

突然友達からそんなことを言われた。わたしは驚いて、え?って訊き返した。

「いっつも頭ぼさぼさでさぁ~、服も着た切り雀だし。」
「そうそう、こないだなんか、靴下がびっこたっこだったの~!」

彼女はいかにも可笑しそうに、お腹を抱えて笑った。
わたしは気分が悪くなり、彼女に反論した。

「彼はすごく優しいし真面目だし、誠実だし涙もろいし。誰よりも人を思い遣ることができる、とても心のきれいな人なんだよ!」
「どんな格好してたって、とっても素敵な人なんだから!!」

「あはは~、ごめんごめん。でも、マジ無理だわ~!」

彼女は涙を浮かべながら、ゲラゲラ笑っていた。
わたしは居た堪れなくなって、その場を走って逃げた。



翌日わたしは、彼のためにお洋服を買ってみた。
密かにわたしとお揃いだったり。ん~、喜んでくれるかな?
足早に彼の部屋へと向かう。
ピンポーン!
彼の部屋のチャイムを鳴らした。
彼は、こんな時間にどした?って言いながら、わたしを迎え入れてくれた。
わたしは急いで紙袋からお洋服を取り出し、彼に合わせてみる。

「あ、ぴったりだぁ~!。うん、似合う似合う~。」

わたしは嬉々として彼のスウェットを脱がせて、自分の買ってきた服を着せようとした。
彼は驚いた顔でずっと黙っていたけど、すぅっとわたしの手を取り、顔を覗きこんだ。

「どうしたんだ?急に。」
「何があった?…おまえ、泣きそうだぞ。」

わたしはハッと我に返り、彼から目を逸らした。

「あ…、あの…。あなたに似合いそうな服を見つけたから。」
「いつも同じ服だし、たまにはこぎれいな服も着てほしいなぁ~と思って……。」

しどろもどろで、自分でも何を言ってるのかわからなかった。
そんなわたしを彼は、そのまま床にぺたんと座らせて自分も差し向かいに座った。
そしてわたしの目を見て、真剣な顔で言った。

「それ、本気で言ってるの?おまえは、俺の何を見てる?」
「見てくれが悪い男とは一緒に居られないか?」

彼の、少し怒ったような目に、わたしは涙がぼろぼろと零れた。

「ちが…。違うの……。ごめっ…。」

わたしは唇を噛んだ。
どんなに辛くても、ちゃんと言わなきゃいけない。

「あなたを、酷く言う人がいたの…。」
「あなたが酷く言われたら、わたしは辛いし哀しい……。」

わたしは買ってきた服で顔を覆った。こんなわたしは見られたくなかった。
彼に、こんなわたしを見ては欲しくなかった。
なのに彼はその服を引き剥がして、自分の指でわたしの頬をなでた。

「俺は、誰に何と言われようと構わない。」
「俺は俺だ。これまでも、これからも変わらない。」
「こんな俺を、おまえは嫌か?」

彼の問いに、わたしは即座に首をぶんぶん振った。

「あなたはあなたのままでいい。」
「わたしは、そんなあなたを好きになったの…。」

にわかに笑顔になった彼が、「それでよろしい!」と言ったかと思うと、わたしを抱えて立ち上がった。
…って、え~~~~!?お姫様抱っこされてるし。
顔から湯気が立ちそうなほど体温が上昇した。

「や…、待って!降ろしてぇ~!!」

彼の首にしがみつきながら足をジタバタしてみたけど、彼の腕力にはかなわない。
したり顔でわたしをベッドまで運び、そっと降ろしてくれた。
そこはやっぱり、彼の優しいところ。

「よし、じゃあこれからはこの格好でいたら、誰からも何も言われないだろう!」
「服のセンスなんか気にしなくていいもんなっ!!」

満面の笑顔でそう言った彼の姿は…。
おパ○ツ1枚とか……。


いやぁ~~~~~~~~~ん!><







(笑) (完)