魔法の吐息







しばらくぶりに、メールチェック。
なにせ、ほっとくと100件超えてることなんてざらにあるから。
いつも友達に怒られる。急ぎの用事もあったりするんだって。
そう言うものかな。便利だけど面倒くさいんだよね。

業者関係、メルマガ、迷惑メール。
そんな中に、図書館からのメールがあった。
「予約した資料が準備できました」って。
予約…?ここしばらく図書館には行ってないんだけどなぁ~。
取り置き期限は…って、今日じゃない!
わたしは慌てて図書館に向かった。
何の本か覚えてないけど。

久しぶりの図書館は、適度な緊張感があってすごく心地いい。
あ~この空気、やっぱり好きだな。
なんで図書館の職員をお仕事に選ばなかったんだろうって、後悔してしまうくらい。
いつか落ち着いたら、パートで雇ってもらおう。うん。

手渡された資料=本は、記憶にないくらい前に予約した中の一冊だった。
哀しい出来事があって、手当たり次第予約しまくって読み漁っていたことがあった。
たぶん、20-30冊くらいだったかな。
全部、彼の大好きな作家さんの本だった。
だって、悔しかったんだもん。

それも落ち着いた頃に届いた、最後の一冊。
なんだか複雑。どうしよう。もう話す人なんていないのに。
うん、でも、本には何の罪もないよね。
生まれた子供に罪はないって言うでしょう?それと一緒だよ、きっと。

わたしは家に帰って、早速ベッドに入った。
この家で、わたしが唯一安心できる場所。
大きなクッションを背もたれに、そっとページをめくる。
あ…。
のっけから、優しくて柔らかい言葉が飛び込んでくる。
うん。あぁ、そうだね。
あなたの選ぶ言葉は、いつもそうだね。
なんだか嬉しくて、読み進めるうちに自然と顔がほころんできた。
あはっ、やっぱりわたし、あなたが好き…。
いや、そうじゃなくて。。

本を抱えて、眠りについた。むかしむかし、そうしていたように。
夢の中で、あなたがささやいてくれるの。
吐息の触れ合う距離で、耳元で。
幸せの魔法。わたしの時間…。